結果発表
小説部門
大賞 「ルカの麒麟」 鈴川 紗以(兵庫県芦屋市)
佳作 「坂道」 塩見 知伸(兵庫県明石市)
佳作 「星の紛れ」 荒木 佳純(長崎県西彼杵郡)
ショートショート部門
大賞 「オトナバー」 塚田 浩司(長野県千曲市)
佳作 「shell work」 小狐 裕介(青森県)
子規・漱石特別賞 「はるのうた」 松山 帖句(愛媛県松山市)
 松山市(市長:野志克仁)は、「第15回坊っちゃん文学賞」の大賞作品に兵庫県芦屋市在住の鈴川紗以さん(54)の「ルカの麒麟」を、佳作に兵庫県明石市在住の塩見知伸さん(42)の「坂道」、長崎県西彼杵郡在住の荒木佳純さん(22)の「星の紛れ」をそれぞれ選出いたしました。
 また今回15回と子規・漱石生誕150年を記念して新設されましたショートショート部門には、大賞作品に長野県千曲市在住の塚田浩司さん(34)の「オトナバー」を、佳作に青森県在住の小狐裕介さん(31)の「shell work」、子規・漱石特別賞に愛媛県松山市在住の松山帖句さん(45)の「はるのうた」をそれぞれ選出いたしました。
坊っちゃん文学賞の概要

 松山市は1889年(明治22年)の市制施行以来、四国の中核都市として発展を遂げる一方、文化的にも、正岡子規、高浜虚子など多くの俳人を輩出、漱石の代表作『坊っちゃん』の舞台となった地として全国に知られています。
 「坊っちゃん文学賞」は、このような文学的な背景のある本市が、新しい青春文学の創造を目指して1989年(平成元年)の市制100周年を機に創設した文学賞です。単行本化やTVドラマ化・映画化されるなど、文芸関係者以外からも注目を集めています。
 なお、第7回より「坊っちゃん文学賞」のホームページを開設し、関連情報の提供を図っております(URL http://bocchan.matsuyama.ehime.jp/)。
第15回坊っちゃん文学賞 応募状況と選考・表彰について

 松山市では、昨年7月から募集していた「第15回坊っちゃん文学賞」の作品募集を本年6月30日に締切りました。「第15回坊っちゃん文学賞」の応募総数は1,941点で、小説部門が854点、ショートショート部門が1,087点となりました。締め切り後 選考を重ねてまいりましたが、数ある候補の中より小説部門では8点を選出し、本日10時30分から審査員長・椎名誠氏、中沢新一氏、高橋源一郎氏出席のもと、松山市内にて最終審査会を行い、大賞1作品、佳作2作品を選出いたしました。(早坂暁氏は東京にて審査)
 また、今回新設されたショートショート部門は 最終候補作3点を選出11月24日(土)午後、審査員長・田丸雅智氏、審査員ウェス・じゃん=まーく氏、神野紗希氏、水鏡なお氏出席のもと、松山市立子規記念博物館にて最終審査会を行い、大賞1作品、佳作1作品、子規・漱石特別賞1作品を選出いたしました。
 審査会後、松山市立子規記念博物館において、各部門の大賞および佳作の受賞者を発表し、表彰式を行いました。
 なお、小説部門大賞受賞者には賞金として200万円が、佳作受賞者には50万円がそれぞれ贈られます。またショートショート部門大賞受賞者には賞金20万円、佳作には賞金5万円、子規・漱石特別賞は賞金5万円が贈られます。(受賞作については、株式会社マガジンハウスが来年2月8日発行する「Hanako」誌に掲載される予定です)
小説部門
大賞 鈴川 紗以さんの受賞コメント

 今回の受賞は今までの人生で一番うれしい。前回最終候補に残っていたが賞は逃した。前回私だけではないが早坂先生に「暗くて萎んでいく作品はよくない」と言われて、先生の言われたように頑張って生きていくことを強調して書いた。今回の作品は、前作よりも好きな作品です。
大賞受賞者プロフィール

兵庫県芦屋市在住。昭和38年7月5日生まれ。京都大学文学部卒、自由業。「映画や舞台に比して、活字の小説が圧倒的にまさっているのは、内面の描写だ。情動、思考、想念、胸懐……。人の心とその動きを、丁寧に書いていきたい。とはいえ心理描写を羅列し、読み手を退屈させるようなシロモノは、論外だ。読者が引きこまれ、どんどん先を読みたくなる小説をこそ、わたしは読みたい。書きたい。」
ショートショート部門
大賞 塚田 浩司さんの受賞コメント

 大人、子供もみんな悩みを持っている。大人はかつて子供だったのに、「子供」の時のことを忘れてしまう。これをショートショートで書けないかと1時間で書いてみた。中学生の娘に読んでもらったら 評判がよかったので自信作となった。今回の受賞は大変うれしいです。
大賞受賞者プロフィール

長野県千曲市在住。昭和58年5月14日生まれ。180年続く日本料理屋の7代目当主兼料理長。「小学生の時コントを作り、ホームルームで発表した。高校の時はオリジナル曲でライブをした。現在は料理長として料理をしている。私はとにかく創作し、人に喜んでもらうのが好き。」
小説部門審査員の講評
審査委員長 椎名誠氏 講評
 今回レベルの高い作品が多い。筆者それぞれの「坊っちゃん文学賞」の組み立て方があり、読ませる作品が多かった。これからも「現代」の要素を入れ、たくさんの苦しみを投影しながら新しい作品がいくつも生まれることを期待している。
審査委員 早坂暁氏 講評
 前回よりレベルの高い作品が多かった。大賞作は一気に読めた作品。文章力、構成力もあり書き慣れた方という印象だった。佳作の「坂道」は地味だけど、純粋で深みのある作品。
審査委員 中沢新一氏 講評
青春文学は高校生の生活を描く応募作が多いが文学まで持っていくのはとても難しい。「星の紛れ」は亡くなったクラスメイト(高校生)と、生きている高校生が様々なゴールを目指していくストーリー。「坂道」は静謐な作品だが内面は燃えている。違う世代、違う考えがよく描けていた。大賞作は絵の造形が見事。前回のリベンジができている。
審査委員 高橋源一郎氏 講評
作品の受賞は「時の運」もあるが、いい作品を書けば必ず受け入れられる。今回の大賞作は日本の女子高校生ではなく1930年代のプラハの若者が主人公。近視眼的でなく俯瞰した目でかけていて、愛される要素がある。
大賞受賞作品あらすじ
「ルカの麒麟」鈴川 紗以
1932年、プラハ。12歳のレオシュは同い年のルカと出合い、ルカの母が働くカフェで遊ぶ仲になる。店には麒麟を描いた美しい絵が掛かっていて、二人はその下で交歓し、無二の心友となる。レオシュが軽い結核で自宅療養に陥るが、ルカが家を探して訪ねてくれ、レオシュは感激する。ところが彼の父の懐中時計がなくなり、父母と弟はルカが盗んだと推理する。レオシュは最初反発したが、論理的に見て、やはり犯人はルカだと結論し、幻滅して、父の命令通り、一方的に彼と絶交してしまう。結核は、5ヵ月で完治する。
 1939年、国がドイツに占領される。レオシュの父は実業家で自動車部品の製造業者。今後ナチスの戦車部品を製造するが、会社を手伝ってくれとレオシュに言う。反ナチスの彼は拒絶する。そのとき父の書斎で懐中時計を目にし、7年前の盗人は弟だったと知らされる。彼は驚愕し、無実のルカに会って謝りたくて、例のカフェに通いはじめ、僥倖にも17日目に再会を果たす。ルカは十六歳で空軍に志願し、パイロットになっていて、これからドイツ軍を撃つため英国に密行するので、店に別れを告げに来たのだ。レオシュは往年の過ちを打ち明け、詫び、慟哭する。ルカは快く「気にしない」と応え、自分の帰還を店で待っていてくれと言って、旅立つ。
 店のオーナーはユダヤ人を妻に持ち、ナチスを逃れて亡命するため、店の運営をレオシュに託す。彼はルカの生還を願い、懸命に店を切り盛りするが、大切な麒麟の絵が盗まれ、やがてルカの戦死が知らされる。享年二十歳。レオシュは生きる力を失うが、ウェイターの激励で再起し、カフェを続ける。三十歳から大学に行き、学芸員になって美術館に就職するとき、店を人に任せて辞める。
 以来永年、レオシュは盗まれた絵を探しつづけるが、見つけ得ず、七十二歳でプラハに没す。だが奇しくもそのとき、アメリカの美術館にその絵が寄贈される。おそらく、ナチスがカフェから盗んで所持していたのを、当時欧州で戦っていたアメリカ将兵が戦利品として持ち帰ってあったのだろう。盗まれてから五十数年。レオシュの他界と絵の寄贈が、まるで暗合のように、同時に生起したのだった
ショートショート部門審査員の講評
審査委員長 田丸雅智氏 講評
 ショートショートの応募の傾向として「青春」の作者それぞれのとらえ方があり楽しく読んだ。「ザ・青春」のようなステレオタイプな作品は少なかった。大賞作はすばらしい作品。BARという設定はショートショートの伝統的なものだが既視感は感じなかった。
審査委員 ウェス・じゃん=まーく氏 講評
 3作ともいい作品。個人的に惹かれたのは「shell work」。人が五感の前になにか気づくということに、共感を覚えた。「はるのうた」は文芸作品としても評価できる。「オトナバー」は完成度が高い作品。
審査委員 神野紗希氏 講評
 もう一度読みたい作品かどうかが基準。短い作品は余白の豊かさも重要。子規・漱石特別賞の「はるのうた」は読み終えた時、松山に旅をしたくなるような素敵な作品。
審査委員 水鏡なお氏 講評
 ショートショートといえども、洗練したアイデアや研ぎすまされた感覚がないと評価されない。大賞作は表現力が素晴らしく、この先どうなるのか考えてしまう楽しい作品。
この件に関するお問い合わせ先

松山市 総合政策部 文化・ことば課  坊っちゃん文学賞実行委員会事務局
電話:089-948-6634
坊っちゃん文学賞ホームページ URL http://bocchan.matsuyama.ehime.jp/
松山市 総合政策部 文化・ことば課  坊っちゃん文学賞実行委員会事務局
〒790-8571 松山市二番町4丁目7-2 松山市 総合政策部 文化・ことば課  坊っちゃん文学賞実行委員会事務局  電話 089-948-6634